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バイオフィルム破壊

14員環マクロライド系抗生物質が蓄膿症治療の定番になったのは、“バイオフィルム破壊”という必殺技を持っているからです。

バイオフィルム

歯を磨かないと、プラーク(歯垢)が歯に溜まってきます。白くてベタベタヌルヌルしているやつですね。このプラークは食べ物のカスやタバコのヤニではなくて、中身は細菌の固まりです。

口の中に残った食べかすを栄養にして虫歯菌は増殖していきますが、歯にくっつかないと、歯を虫食いにできません。そこで、細菌は砂糖から糊のような多糖体をつくりだして歯にへばりつきます。

そのまま放っておくと虫歯菌はヌルヌルベタベタの中で生き続け、そのうちにヌルヌルが分厚くなって立派なプラークのできあがり。

このプラーク、つまりヌルヌルベタベタでくっつき合った細菌同士の固まりがバイオフィルムです。

口の中だけでなく、細菌は花瓶の中や配管の中など色々な所でバイオフィルムをつくり、もちろん鼻の中にもつくります。

鼻の中のバイオフィルム

例えば緑膿菌や黄色ブドウ球菌が副鼻腔で増殖し始めると、粘液状のムコ多糖体を産生してバイオフィルムを形成します。このバイオフィルムが抗生物質の攻撃を跳ね返してしまい、中の細菌はヌクヌクと生き続けます。

また、バイオフィルム内の細菌は、ほとんど増殖しない休止状態でおとなしくしながら、鼻の炎症を起こしにくくすることで、免疫反応を回避しているとも言われます。

これらのことが副鼻腔炎の難治化、慢性化の大きな要因として考えられるようになりました。

つまり、薬が効いている時はバイオフィルムの中にじっと隠れて、治ったと思わせておいて、ほとぼりが冷めた頃に「それっ」とばかりにバイオフィルムの中から出てきて暴れ回る(急性憎悪)わけですね。
細菌のくせに悪知恵が働くじゃありませんか。

マクロライドのバイオフィルム破壊

マクロライド系抗生物質は、緑膿菌のようなグラム陰性菌には抗菌効果がないそうです。ちなみに緑膿菌は院内感染菌として有名で、主に呼吸器や尿路に感染して病気を難治化させます。

しかし1984年、都立駒込病院の 工藤翔二先生 によって、びまん性汎細気管支炎患者にエリスロマイシンを少量長期投与すると、効果があることが明らかになりました。
普通量を投与しても効果がないはずなのに、あえて少量を投与するというのは凄いひらめきですね。

この発見によってエリスロマイシンについての研究が進み、エリスロマイシンを含む14員環マクロライド系抗生物質が、粘液の分泌を抑制したり炎症を抑えることと、細菌のつくるバイオフィルムを破壊することが明らかになりました。

この効果は気管支炎のみならず、中耳炎や慢性副鼻腔炎にも有効であることが報告され、以降エリスロマイシンや、その改良型のクラリスロマイシン、ロキシスロマイシンが蓄膿症治療の定番となりました。

マクロライドがどのように作用するのかは、完全に解明はされていませんが、バイオフィルム破壊の効果があるのは14員環マクロライド系と15員環マクロライド系に限られ、16員環マクロライドでは効果がないそうです。

ついでに・・・

バイオフィルム破壊を目的として、大人でも耳鼻科で“クラリス小児用”を処方されることがあるようです。窓口で怒らないように。

参考リンク
歯周病 歯槽膿漏web:歯周病の原因はプラーク
無駄口薬理学:バイオフィルム感染症
藤田保健衛生大学:抗菌剤の分類